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<ネタバレ>久しぶりに見る東映任侠映画。加藤泰監督が初めて手がけた本格的な任侠映画とのことだが、それを少しも感じさせることがない手堅さで、それでいていかにも加藤監督らしい映画になっていて、冒頭のクレジットタイトルのバックの俯瞰映像から既に魅せてくれているし、何といっても浅次郎(鶴田浩二)に買われた初栄(藤純子)が、そのおかげで父親の死に目に会いに帰ることができたことで浅次郎に礼を言いにくる川べりのシーンもとても美しく、このシーンだけでもこれぞ映画と感じさせていてここだけでも見る価値はあると思う。本筋としてはよくある任侠映画のフォーマットに収まった作品と思うものの、この浅次郎と初栄のラブロマンスを絡めたことで映画に奥行きが出ていて、よりドラマチックな内容になっていると感じる。この二人のお互いに秘めた想いや情念というものをうまく描いていて、ただの任侠映画に終わらないドラマとしての深みを出そうという加藤監督の意気込みのようなものが伝わってきて、名作と呼ばれている理由も分かり、じゅうぶんに楽しめたことは確か。でも、浅次郎が三代目を継ぐことに反対していた二代目の息子である春夫(津川雅彦)が家業を譲ると言われた途端にコロッと態度を変えるところなどもう少しじっくり描いてほしかった部分もあり、その点で少し物足りなさも感じたのも事実。ラストの鉄道の上を連行される浅次郎とそれを見送る初栄のやりとりも良く、印象的だった。それにいちばん最後、汽車の映像で終わっているのがなんとも加藤監督らしい。