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<ネタバレ>西原理恵子の夫のアルコール依存症闘病記を「サード」の東陽一監督が映画化した作品。こう聞くと重苦しい映画のように思うが、東監督は主人公をあくまで客観的に見つめることで、けっして重くならないようなつくりにしている。アルコール依存症の患者の描写が主人公含め全くリアルでないのもおそらく意図的なものだろう。確かにこれではアルコール依存症の本当の意味での怖さというものは伝わらないかもしれないが、東監督はあえてリアルさを抑えて客観的に描くことでこのだらしない主人公の滑稽さを強調することで観客に主人公に対して同情の余地を与えないという狙いがあったのではないだろうか。アルコール病棟の患者たちの日常は病気に関してはリアリティーがないものの、そのほかは実際の入院患者たちの日常を垣間見ているようである。どことなく「サード」の少年院を思い出してしまうが、ここがドキュメンタリー出身の監督らしいところかもしれない。ただやはり「サード」のほうがこういうドキュメンタリータッチの演出は活かされている気がする。浅野忠信は「風花」でも酒を手放すことのできない男を演じていたが、本作でも酒に溺れる男を違和感なく演じており、「風花」のDVDのメイキング映像において、本当は酒が飲めないふうなコメントをしてたと思うが、それが信じられないほどの演技を見せている。永作博美演じる妻の「一度好きになった人のことをなかなか嫌いにはなれない。」というセリフが印象的だった。ラストの海で戯れる家族とエンディングの忌野清志郎「誇り高く生きよう」が余韻を残す。