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<ネタバレ>借金のカタに廓に売られたヒロイン お絹(桜町弘子)の目を通してその地獄のような廓の実態を描いた加藤泰監督の映画。最初は天国のように見えた廓の仕組みをお絹が理解するに連れ、見ていてこちらまで居心地の悪さを感じるし、様々な事情で廓にやってきた女郎たちの生きざまも胸に迫るものばかりで、逃げようとして連れ戻されて拷問を受けたり、客に理不尽な理由で殺されたりといった女郎たちの末路を見るとやり切れない思いに駆られる。加藤監督はそんな廓の実態をリアリティを重視して描いており、ドラマとしてかなり見ごたえのある映画になっているし、加藤監督の映画の中でも傑作と呼ぶ声があるのもうなずける映画だ。廓の主人夫婦をを演じるのが三島雅夫と菅井きんというのは裏があるのが分かりやすすぎるキャスティングだが、この二人の悪役ぶりが実に良いからこそ、廓の恐ろしさもじゅうぶんすぎるほど伝わってくる。そして何と言っても主演の桜町弘子。東映時代劇でよく見かける脇役女優で、本作が唯一の主演作(本人は自分の名前が最初に単独でクレジットされるのを見て感動したという。)とのことだが、見事に熱演していてそれを感じさせず、本作は加藤監督の代表作であるとともに、桜町弘子にとっても間違いなく代表作だと感じる。ラストの恋人(夏八木勲)と一緒に橋を渡って廓を出ていくお絹のなんとも言えない明るい表情はこれまでの彼女の苦労を思うと、お絹がやっと幸せをつかめたことがわがことのように嬉しく、思わず良かったねえという気持ちになり、このラストには泣かされた。舞台が洲崎にある廓であり、思わず「洲崎パラダイス 赤信号」を思い出したが、あの映画でも舞台の少し先にある遊郭はひょっとしたらこんな状態だったのかもしれないと想像してみるのも楽しい。[良:1票]