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<ネタバレ>NHKの「プロジェクトX」あたりでいかにも取り上げられていそうな実話の映画化作品だが、中村義洋監督の演出も丁寧でオーソドックスに作られていて無難な感動作といったところ。主演の阿部サダヲはどうしてもコミカルなイメージの強い俳優だが、何年もかけて当時誰もやったことがない無農薬リンゴの栽培に挑戦する主人公を熱演していて意外と言っては失礼かもしれないが、良かった。中盤あたりの無農薬リンゴに取りつかれてしまったような姿はちょっと怖いものがあり、何もそこまでと思ってしまい、少しひいてしまったのだが、最初は病弱な妻を思ってはじめたことから諦められなくなり当初の目的を忘れて熱中してしまうというのは分からなくもない気もする。そしてついに離婚や自殺まで考えてしまうようになるに至るのは生々しいほどリアルで重く、見ているこちらまでどんよりと暗い気持ちになってしまった。しかし、自殺しようとした主人公がそれに失敗した直後に偶然無農薬リンゴ栽培の答えにたどり着くというのは脚色があるにせよ実話としては少々できすぎた話に思えてしまったのはちょっと残念で、さらにそこからの終盤30分ほどが少し長い気がした。良い映画なのは間違いなくて、さっきも書いたように作りも丁寧なんだけど、映画としてはせめて答えにたどりついた段階で終わっていても良かったんじゃないかなとも思う。それとあともう一つ。妻役の菅野美穂は悪くはないんだけど、朝ドラでいつも見てるのが原因でその役のイメージが強くなっているせいか、比べてしまうと朝ドラのほうがしっくりきている気がする。