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<ネタバレ>深作欣二監督が「仁義なき戦い」以前に菅原文太と梅宮辰夫を主演に起用して手がけたヤクザ映画。冒頭のナレーション(小松方正)とテロップは「仁義なき戦い」を思わせていて、いよいよ実録ものの前夜という雰囲気。でも印象としてはやっぱりまだ義理人情の世界を描いた任侠映画で、菅原文太も梅宮辰夫も「仁義なき戦い」ほどの凄みはなく、インパクトも感じなかった。でも、映画はなかなか面白く、スラムをつぶしてのコンビナート建設をめぐる二つの組織の利権争いが描かれるが、本作は主人公ふたりをそのスラム出身としているところが新鮮で、これがよく利いていてドラマ性を出すのに成功していると思う。スラムの描写もリアルでうまく、メッセージ性も社会性も時代性もあり、ただのヤクザ映画にしたくないという深作監督の思いも感じられる映画になっている。ラストは東映任侠映画ではお決まりの殴り込みなのだが、このシーンが激しく、敵である渡辺文雄だけでなく、主人公ふたりも死んでしまうという壮絶な結末が深作監督らしい。いちばん最後に出るナレーションとテロップは東映任侠映画にしては異質な感じがして、後味はあまりよくないように思うのだが、こういうのも新鮮で良かった。「仁義なき戦い」シリーズに比べれば物足りないのも事実なのだが、深作監督の権力に対する怒りというものも感じられ、彼の作風はちゃんと出ている。ところで菅原文太の兄貴分役で鶴田浩二が出演しているが、ちょっと本作では浮き気味だし、それにやはり鶴田浩二は東映任侠映画では菅原文太より高倉健の兄貴分を演じているほうがしっくりしている気がする。少し甘めだが7点を。