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<ネタバレ>よくある難病をテーマにしたヒューマンドラマには違いないと思うのだが、野村芳太郎監督は破傷風という病の怖さを「八つ墓村」のようなオカルト・ホラータッチで描いており、一部で言われている「ホラー映画よりも怖い映画」、「トラウマ映画」という評判が納得できるほど怖い映画だった。それでも、父親(渡瀬恒彦)の破傷風に対する偏見や、母親(十朱幸代)が壮絶な看病の果てに精神的に参ってしまうあたりはとてもリアルに感じられたし、この両親の娘に対する愛情の深さや心の葛藤もよく描けている。しかし、だからといってこの二人に感情移入できたかといえばそうではなく、最初から最後まで傍観していたというのが本当のところ。それよりも破傷風に侵される娘を演じる子役の演技がすごく、この映画のオカルト・ホラー映画のような演出とマッチしていて、それも難病に立ち向かう一家を描いた人間ドラマというよりもホラー映画という印象のほうが強くなってしまう一因だろう。また、結末もあれだけ深刻だったわりには唐突にえらくあっさりと回復の傾向が見えて終わるため、結局この映画は破傷風の怖さをオカルト映画のように表現したかっただけのように思え、難病に立ち向かう家族を描いたドラマとしてはちょっと物足りなく、見終わってもホラー映画という感覚が抜けない。一応、野村監督は破傷風の怖さとともにこの家族の人間ドラマも描きたかったようだけど、どうしても(さっき書いたようによく描けてはいるが。)破傷風に苦しむ子供のインパクトに人間ドラマが負けてしまっている。ただ、(何度も言うが)実際はホラー映画ではないにも関わらず、一級品のホラー映画のような印象が残り、少々過剰にやりすぎとも思うし、全く逆の結末のほうがよかった気もするが、破傷風の怖さが十分すぎるほどつたわってくるので、難病の啓発映画としてこれ以上のものはないのではないかと思う。(それでもやっぱりやりすぎだよなあ。)ペンチで歯を抜くシーンの医者のセリフもすごすぎる。