<ネタバレ>長崎原爆で被爆した放射線医師 永井隆の随筆を元にした木下恵介 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>長崎原爆で被爆した放射線医師 永井隆の随筆を元にした木下恵介監督の反戦映画。木下監督の原爆への怒りや、永井博士に対する思いがじゅうぶんすぎるほどストレートに伝わってくる映画である。しかし、原爆が投下されるまでを描いた前半はいいのだが、被爆した永井博士のその後の人生を追う後半になると、主人公である永井博士がいかにも偉人といったような描き方がされているためか、さして感情移入が出来ぬまま進んでいった感があり、はっきり言って退屈してしまった。それに、木下監督といえば、映画にメッセージ性を込めた作品も多いが、本作ではそのメッセージ性が強すぎてなにか居心地の悪さを感じたのも事実で、永井博士がカトリックなのを強調するかのように精悍でどこか宗教的な感じがするのも個人的にはちょっと押しつけがましい。それでも前半の原爆投下までのシーンは、それまでの人々の生活が丹念に描かれている分、その生活が一発の原爆によって一瞬で破壊されることを思うとやっぱり切なくなる。本作では原爆投下シーンは永井博士の息子が遠くに光を目撃することで表現され、原爆の威力を見せつけるシーンもそれほど映像的には生々しさは感じないが、逆に原爆投下後の長崎の惨状を想像させていてこれはうまいと思った。でも、そうして見る人の想像に委ねていたと思われた原爆投下直後の長崎の惨状シーンを最後にあえて見せてしまうのはどうかと思うし、意図もよく分からず、構成としてもあまり感心はしない。結局見せるならもったいぶらずに前半で見せてしまえば良かったのにとつい思ってしまった。