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<ネタバレ>シリーズ第2作。今回からいよいよ武蔵(たけぞう)から武蔵(むさし)になった後の物語が描かれるわけだが、冒頭の幽閉から解放された武蔵は前作の荒々しさがなくなり、人間的になった武蔵は本当に別人のようになっており、演じる錦之助の上手さをこの冒頭から感じずにはおれないが、因縁の相手である吉岡一門の登場など物語的にもここからが本当のスタートといった感じがよく出ている。そんな今回はタイトルにもあるように般若坂の決闘がクライマックスの見どころなのだが、今見ると中盤の武蔵と日観(月形龍之介)との会話やその前の阿厳(山本麟一)との対決シーンのほうが印象深く、とくにこの阿厳のシーンはまず阿厳の強さを見せておいて、そのうえでその阿厳を一瞬で武蔵が倒してしまうという展開で、武蔵のその圧倒的な強さが初めて示されるシーンでもあり、とても印象に残る。阿厳を演じている山本麟一も短い出番ながらもすごい存在感を見せていて良い。クライマックスの決闘の後で明かされる日観のしたたかさもなかなかのもので、自分が利用されたことを知って憤慨・葛藤する武蔵で次回へつなげるというのがうまい幕引き。今回から武蔵の弟子となる少年・城太郎(竹内満)が登場しているが、初登場となる今回から既に活躍の場があって、立派な主要人物の一人であることを印象づけている。もちろん、内田吐夢監督の演出も前作と変わらず重厚で力強く、2作目でも高い完成度を保っている。冒頭に登場する沢庵(三國連太郎)が武蔵と別れる直前の会話で「三年たって時代は変わった」というのを言うのだが、このシリーズをやっている5年間の間に東映は時代劇からヤクザ・任侠映画に方向転換することを知っているので、この沢庵のセリフは思わずそれと重なって聞こえてしまう。(2021年2月20日更新)