<ネタバレ>内田吐夢監督による中村錦之助主演の「宮本武蔵」五部作の完結編 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>内田吐夢監督による中村錦之助主演の「宮本武蔵」五部作の完結編で、内田監督にとっても東映専属最後の作品になるわけだが、やはり前作でピークを迎えてしまったようで、この完結編単体で評価してしまうと正直そこまでの面白みは感じないし、内田監督の本作の一つ前の作品が「飢餓海峡」だったということもあり、その余力で臨んでいるような印象も受けてしまうのだが、それでも、剣に生きた武蔵の長い長い物語の最後として見れば武蔵のドラマとしてすごく見ごたえのあるシリーズだったと思うし、久しぶりに全作見返して、どの作品も重厚でまさにこれぞ大河時代劇と呼ぶにふさわしく、この五部作を初めて見た後にも武蔵を描いた映画はいくつか見ているが、やはりこのいちばん最初に見たこのシリーズが最高の武蔵映画であることを改めて確認できたのは良かったと思う。ラストで小次郎(高倉健)を倒し、己が今まで追い求めていた剣が所詮武器に過ぎないということを悟った武蔵からはどこか虚しさのようなものを感じずにはおれないが、剣をひたすら追い求めた武蔵の物語のラストとしては、見ていて説得力があり、同時に武蔵がこのあと、どういう人生を歩むのかということも少し気になった。脇に目をやると内田監督の映画の常連である千恵蔵が長岡佐渡を演じているが、千恵蔵は戦前の稲垣浩監督の「宮本武蔵」で武蔵を演じていた縁もあっての出演であることは想像に難くない。1作目でとても印象的だった沢庵和尚(三國連太郎)が再登場するあたりにもいよいよ完結という雰囲気がよく出ている。「般若坂の決斗」でも少し書いたけどもうこの頃は東映時代劇の末期に近く、小次郎を演じる高倉健も既に任侠映画のスターとしてブレイクし始めたころだっただろう。その中にあって、きっちりこの五部作を完結することができたのは内田監督にとっても本望だったのではと思えてくる。改めて本当に素晴らしいシリーズだった。(2021年3月16日更新)