<ネタバレ>北斎と馬琴、それにその他の絵師たちのやりとりの中に当時の雰囲 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>北斎と馬琴、それにその他の絵師たちのやりとりの中に当時の雰囲気をうまく醸し出しているのがうまいし、北斎を演じる緒形拳の演技もパワフルならば、新藤兼人監督の演出も当時70歳近いとは思えないほどにエネルギッシュで、北斎の作品に対する情熱や執念がよく伝わってくるし、それは新藤監督の映画に対する情熱や執念でもあると感じることができる。見る前はもう少しシリアスな映画かとも思っていたが、想像以上にコメディ色が強く最後まで肩の力を抜いて楽しく見ることができたのも良かった。中でも後半、晩年を迎えて老人となった北斎と馬琴(西田敏行)のやりとりはコントのようで笑える。まだ若い田中裕子も北斎の娘を少女時代から老年期に至るまでを違和感なく演じている。彼女と樋口可南子演じるお直という二人の女性の対比も良かった。二人とも北斎の絵のモデルとして豪快に脱いでいるのが大胆。北斎が「蛸と海女」を描くシーンでの樋口可南子(妙に色っぽい。)とタコとの絡みは、タコが作り物丸出しであるにもかかわらず、強烈なインパクトを残していて、とても印象的だ。(かなり笑えるシーンでもあるのだが。見たのが深夜で良かった。)馬琴の妻を新藤監督の映画の顔である乙羽信子が演じているが、西田敏行と乙羽信子は後年の「釣りバカ日誌5」で親子役を演じており、その印象が強くて見る前はちょっと不安だったのだが、二人の演技力のおかげかとくに違和感は感じなかった。この二人のやりとりも楽しい。