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<ネタバレ>1か月ほど前に「蒲田行進曲」を見たので、こちらも久しぶりに再見。松竹大船撮影所の50周年を記念して作られた山田洋次監督による映画で、一人の新人女優がスターになっていくまでを軸に蒲田時代の松竹を描いているが、本来こちらが「蒲田行進曲」というタイトルになっていてもおかしくないと思うような映画になっているのが、「蒲田行進曲」とあまり間をあけずに見ると、やはり松竹内部ではあの映画に対する不満があったのではと思うような正統派な内容になっていて、方向性としては間違っていないのだろう。山田監督の映画に対する思いや、先輩監督たちへの敬意も感じられ、そのあたりも興味深く見られる。でも、「男はつらいよ」シリーズ開始以降のそれ以外の山田監督の映画の中では何か物足りなさがあり、逆に寅さんのレギュラー陣が多く出演していることによって、寅さんを見ているような錯覚を覚えてしまうのも事実で、渥美清演じる喜八(たぶん、小津安二郎監督のサイレント映画の坂本武の役名から取られているのだろう。)のキャラクターや、彼と倍賞千恵子演じる奥さんや笹野高史演じるくず屋の男とのやりとりは確かに面白いものの、安定感がありすぎて寅さんを普通に一本作ったほうが良かったのではと思えてくる部分でもあって惜しさを感じる。でも、その喜八が奥さんに惚れていると思わせるところや、クライマックスの映画館で奥さんと映画を見ていた喜八が映画の途中で息を引き取っているシーンなどは寅さんでは絶対に出来ない展開で、山田監督は一度こういうことをやってみたかったんだろうと思えてくる。記念作らしく豪華な出演陣だが、主演の有森也実は本来予定されていた女優の降板によって急遽抜擢されたとのこと。終盤で新作映画の主演女優が出られなくなり、まだ知名度の低い主人公が代役に抜擢されるというのが現実とダブっているが、おそらくそういう狙いもあったのだろうと思う。(現実にも劇中さながらに代役を誰にするかという問題が起こっていたんだろうなあ。)最初に「蒲田行進曲」のことを書いたのだが、本作にも松坂慶子と平田満が出演していて(一緒のシーンはない。)なにか複雑。対抗意識があるのならこの二人は使わないでほしかったかな。(2024年8月26日更新)