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<ネタバレ>小林正樹監督が「切腹」に続いて橋本忍とコンビを組み、滝口康彦の原作を映画化した時代劇。見る前はスタープロである三船プロの製作のため、あまり小林監督らしさは出ていないのではとも思ったが、見てみるとまったくそんなことはなく、「人間の条件」にも通ずるようなテーマが実に小林監督らしいとても重厚な見ごたえのある映画だった。藩が笹原家に出した要求はあまりにも身勝手で、藩の圧力にひたすら耐える伊三郎(三船敏郎)、与五郎(加藤剛)、いち(司葉子)にとても感情移入ができるし、主演の三船がなかなか刀を抜かずに静の演技が多いところにも、俳優の魅力よりも映画自体のストーリー性で魅せようという小林監督の意図が感じられる。黒澤明監督の「用心棒」や「椿三十郎」で三船と敵対する役を演じていた仲代達矢が今回は伊三郎の友人役で出演しており、本作でもクライマックスで決闘をすることになるのだが、敵対することになっても今回は友人同士という設定のためか、重苦しさがあり、派手さもなく、爽快感もないというのがやっぱり先の2本とは違うところで、本作は単純な娯楽時代劇というわけではないということもあるかもしれないが、このあたりに同じ二人の決闘でも印象の違いを見ることができる。(仲代が本作でも負けてしまうのはやっぱりお約束だろうか。)しかし、終盤30分はそれ以外でも三船の殺陣の見せ場が多く、それまでのドラマで魅せる展開を考えたら少しそこだけ浮いてしまった感もなくはない。殺陣による見せ場を三船と仲代の決闘だけに絞っても良かったのではと思う。そこだけがちょっと残念。でも、内容的に見るべきもののある映画で、「切腹」には及ばないものの、この映画もまた小林監督の時代劇での代表作と言っていい名作だと思う。