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<ネタバレ>殉死というのは今現代に考えるとちょっと異様さを感じる風習のように思うのだが、深作欣二監督はそういう武士の忠義と、それに対する社会勢力とを対比させながら重厚さと格調の高さをもって描いていて、2時間ドラマのテレビ時代劇とは思えない劇場公開映画のようなクオリティの高さがあり、とても見ごたえのある時代劇に仕上げている。後半は阿部一族が藩に抵抗していく様が描かれていて、小林正樹監督の「上意討ち 拝領妻始末」を思い出すが、実際にもこういう事件はあったのだろうと思わずにはいられない。この事件は双方に多数の死者を出す悲劇になるのだが、すべてが終わった後になにか空しさを感じさせるラストになっているのも良かった。深作監督らしい激しいシーンはテレビ作品ゆえかいつもより控えめなのだが、クライマックスの阿部一族と藩の討手の戦いのシーンはいかにも深作監督らしい激しいアクションが展開されていて、これも見どころ。中でも佐藤浩市と真田広之の決闘シーンはリアルで迫力があり、深作監督の演出もここは力が入っていて、見ごたえもじゅうぶんだ。しかし、このクライマックスはそれまでの重厚な雰囲気と違いすぎて全体としては少々バランスが悪くなってしまった感があるのはやはりちょっと残念だった。でも、深作監督は明らかに映画を意識して本作を手がけているのが見ていてよく分かる作品になっていて、テレビ作品だからと言って侮れるものでは決してない骨太な時代劇としてじゅうぶん傑作といえる作品だと思う。(2014年8月28日更新)