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<ネタバレ>篠田正浩監督の近松ものというと「心中天網島」が思い浮かぶが、斬新な演出を駆使していたあちらに比べ、かなりオーソドックスな作りで分かりやすい映画になっている。「心中天網島」が個人的にいまいちだったのであまり期待をしていなかったのだが、安心して見ていられた。宮川一夫の撮影や、美術協力としてクレジットされている西岡善信(美術は粟津潔)の仕事が素晴らしく、映像は美しいし、おさゐ(岩下志麻)の縁側でのシーンや、障子を背にした影だけで描かれるおさゐと権三(郷ひろみ)のやりとりが印象的。ただ「槍の権三」というタイトルのわりには権三の槍の名手というすごさがイマイチ伝わって来ない。郷ひろみはこういう映画の主役を演じるにはどうかと思っていたが、けっこう頑張っていると思う。同じ年に公開される「極道の妻たち」の姐さん役があたり役となる岩下志麻のほうはさすがに演技は安定しているが、既に貫ろくがついてしまっており、既に極妻のイメージにかなり近づいてしまっている。だから、成り行きとはいえ、郷ひろみのような男と駆け落ちするような女にはとてもではないが見えない。はっきり言ってこの役、岩下志麻にふるならもう少し彼女が若い頃にやっていたほうが良かったのではと少し思ってしまうのだが。