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<ネタバレ>新藤兼人監督が鬼女伝説を元に手がけた時代劇。見る前はいかにも地味な映画で少し退屈するかもと思っていたが、確かに新藤監督らしいオールロケ作品で金がかかってなく地味ではあるものの、見ていてだんだん引き込まれた。「鬼婆」というインパクトの強いタイトルで、実際物凄く恐ろしい内容なのだが、その恐ろしさというのが、鬼婆のそれではなく、人間のエゴとかそういうものであるあたりが実にリアルに描かれていて衝撃的だった。乙羽信子、吉村実子、佐藤慶という濃すぎる主演の三人の演技にも力が入っており、三人とも熱演しているが、特に乙羽信子のこういう恐ろしい演技は初めて見るような気がして、非常にインパクトがあり、しばらくは乙羽信子を見るたび思い出してしまいそう。宇野重吉演じる武将が穴に落ち、乙羽信子から鬼の面が外れなくなった時点でラストは予想がついてしまったが、それでもラストは鬼になってしまったという理由だけで吉村実子演じる嫁(こちらもインパクト絶大。)からも逃げられてしまう乙羽信子が自分では顔が見えていないのもあって哀れに思えて仕方なかった。先ほども人間のエゴが恐ろしいと書いたが、まさにこれは人間の心の暗部を鋭くえぐった社会派映画の傑作であると思う。白黒であるというのも効果的だった。[良:2票]