<ネタバレ> いやおうなく自分の不幸な過去を否定して生きてきた者が、記憶 .. >(続きを読む)
<ネタバレ> いやおうなく自分の不幸な過去を否定して生きてきた者が、記憶をよみがえらす旅を通じて、ようやく過去を肯定するに至る。そこに至るまでの、現在と過去が繰り返し対照されてゆくところが秀逸だった。
それにしても、ここに出てくる男は、いずれもつまらない存在で、まったく影が薄い。また、堕胎したからといって、それで「空っぽになる」という感覚は、男にはどうしたって理解できない。そこでスタッフをみてみると、監督は男とはいえ、原作も脚本も女。そうか、これはまさに女性映画なのだ。これに比べれば、昔、1980年前後に一世を風靡した、いわゆる「女性映画」なるものは、しょせん男が女性客の動員をあてこんだ、男主導のエセ女性映画にすぎなかったとわかる。ここでは、男などいうものは、しょせん精子提供者以上のものではないのだ。
俳優陣では、関西弁の教祖の余貴美子が味があったほか、写真館主人の田中泯は、これといった動作もないのにかかわらず、不気味な存在感を漂わせていたのがすごかった。