90年代のある年、私はアカデミー賞の中継をTVで観ていた。リ .. >(続きを読む)[良:1票]
90年代のある年、私はアカデミー賞の中継をTVで観ていた。リポーターとして現地に行っていたある日本の俳優が、通行中のアカデミー会員らしき中年の白人男性にインタビューをした。彼がおそらく何気なく言ったであろう言葉に、私は衝撃を受けた。「白人は黒人の映画なんて観ないんですよ」。公正に審査をすべき立場の人間の放った言葉とは思えなかった。今でも忘れられない。アメリカの人種差別というものは根深いどころの話ではない。なんてアンフェアな国なんだ、と気分が悪くなった。この作品も草の根レベルでは熱狂的に支持されつつも、あらゆる映画祭から無視された。アンフェアだ、と各界から声が上がった。そして少なくともこの作品は非常にフェアだ。人種差別を提起しつつ、差別される人間をそれでも全く美化しない。そして黒人だけでなく、イタリア人、韓国人、と被差別側の様々な人種の視点も盛り込んでおり、独りよがりの展開を押し付けていない。メッセージ性をいかにもというように押し付けず、個々の観客にその読解を求め、思考を促す。私も私なりに考えるものはかなりあったのは確か。でも私はアメリカの人種差別の体感温度は分からない。日本にどっぷり浸かっているから。だからこの映画のメッセージなり何なりをきちんと受け取れたかどうかはかなり怪しい。そういう意味で高得点はどうしても付けられない。私の理解、精進を促す意味も込めて、この点。[良:1票]