<ネタバレ>払わないと車を差し押さえられる290ドルがどのくらいの金額な .. >(続きを読む)
<ネタバレ>払わないと車を差し押さえられる290ドルがどのくらいの金額なのかがわからないので困ったな、と思っていると、新聞社の編集の仕事が週給35ドルとわかり、なるほど、290ドルは2か月強の給料なのかとちゃんとわかる仕掛けになっている。そして、週500ドルとはずいぶん吹っかけたものだと観客に思わせ、そんな金額は問題ではないと女主人公に一蹴させることで、彼女の金満家ぶりも窺える、という一連の流れは、貨幣価値が製作当時と全く違った時代に生きているわれわれにとってはありがたい。中盤、主人公と閲読係との間で、「陳腐な脚本だが、人物像が魅力的なのは、実在の人物にもとづいているから」というような会話を交わすくだりがあるが、この部分がスパイスとして非常に効いている。この映画自体、金持ちの年上の婦人と仕事にあぶれ金に困っている男、という陳腐な設定ですすむのだが、この部分が挿入されたことで、観客は女主人公と執事についての予備知識がなくても、実在するモデルにもとづいた人物像だと知らず知らずのうちに思って見入ってしまい、ただでさえ鬼気迫るラストの怖さが、いっそう増幅されるつくりになっている。ただ、テーラーの場面と、邸宅の天井や調度品を説明する場面がモノクロ画面のためか、科白に頼りすぎてしまっていたのが少々残念。