凡庸な作品ならば、仕事の前に、目標がいかに堅固に守られている .. >(続きを読む)
凡庸な作品ならば、仕事の前に、目標がいかに堅固に守られているか、それを打ち破るためにどんなうまい手はずがあるのか、などを打ち合わせる場面が挿入されそうなものだが、一切そういう説明をせずに映像で何が起きつつあるのかを観客に見せきってしまう演出は見事の一言。音楽の良さだけでなく、ブツを運び出す機械や、ブツ自身の落ちる音など、仕事中に発生するあらゆる音の拾い方がとても丁寧なので、臨場感に富んでいた。事の最中だけでなく全篇を通して、音楽と音の組み合わせがとてもうまいと思った。また、ずっと眼鏡をかけている教授が、一杯食わされる場面のときだけ眼鏡をはずして素顔になっているところや、警察に車を止められてしばしの緊張があり、それが解けてほっとした瞬間に映し出される、葉巻の灰が今にも落ちそうな長さになっているところなど、小道具の使い方もいちいちメリハリが利いていて観ていて嬉しくなる。余談だが、ロッサナ・ポデスタ(の顔はなんとなくきれいなおねえさんで一世を風靡した水野真紀に似ているのではないだろうか。この作品中、ほくろがついていたり、ついていなかったりするところなんか本当にそっくりである。