<ネタバレ>ゴージャスなホテルのバーで飲む極上のブランデーのような、最高 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>ゴージャスなホテルのバーで飲む極上のブランデーのような、最高にクールな(カッコイイ)雰囲気――それがまず本作の何よりの魅力。マーロン・ドンのしわがれた声、終始悲しみをたたえて流れるメロディ、ボスとなってからは表情をゆるめることのないアル・パチーノ新ドン……すべて決まりすぎるくらいキマッていて、しびれるような感覚を覚える。 マイケルは、イタリアに身を隠しているとき、ファミリーのルーツであるコルレオーネ村を訪ねようとする。地元の身元引受人が「車に乗っていけばいい」というのを「いや、歩いていく」と断り、自らの足で“故郷”へと向かう。そこには、やがて運命の糸に引き寄せられるようにファミリーへと入っていく男の定めが示され、「妥協」という言葉と無縁な男の生きざまがさりげなく布石される。 イタリアで一目惚れの女性と首尾よく結婚するも、新妻はマイケルの目の前で謀殺される。そこに、逃れようのない自らの宿命を見せ付けられ、以後のマイケルは自分の宿命を真正面から受け入れた男へと変貌する。 ラストシーン、妻から「義弟を殺したのか」と問われ、「No」と答える。それは夫としての思いやりからだったのか。それとも、完全にカタギの世界と決別するゴッドファーザーとしての宣言だったのか。重厚なトビラが閉じられ、それをなすすべなく見るしかない妻、という終わり方は見事! ただ本作は、描かれた男たちの生きざまや振る舞いのクールさ、しびれるようなカッコよさが最大の魅力をかたちづくる一方、同時にそのことが限界ともなっている。つまり、存分に作品世界に浸り込むことはできるが、では、そこから何が得られるかというと、感覚的な充足感という消費しかない。このあたり、のちに「地獄の黙示録」で同じ監督が、やはり同様に感じさせる欠落感の予兆があるような気がする。ということで、8点也です。