<ネタバレ>アイデンティティ、スプレマシーと、独特の世界で魅せてくれてき .. >(続きを読む)[良:2票]
<ネタバレ>アイデンティティ、スプレマシーと、独特の世界で魅せてくれてきたボーンシリーズ。もしかしたら、これがラストとなるかもしれないとあって封切り早々に見たが、期待が高かっただけに、やや欲求不満が残ってしまった。
最大の問題点は、何より、ボーンがデブってしまってたこと。もっとも恐れていたことが起こってしまった。これは単純なことだが、非常に重要なことである。この一事をもってして、本シリーズで貫かれるはずの緊張感が欠け、一気にレベルダウンを招いてしまっている。ジェイソン・ボーンは、戦闘能力においては完璧でなければならない。もちろん、強敵相手には苦闘するときもあるが、それは相手も完璧に近いからで、そんな極限レベルにおける究極の闘いを、いかに頭脳と肉体を駆使して切り抜けていくかが本シリーズの醍醐味であり、中核のはずだ。
ところが、主人公がデブになっていては、もう、その時点で張り詰められるはずの緊張にダレが生じる。それは本作のような作品にとっては致命的で、ストーリーや演出をどんなに頑張っても挽回不可能の陥穽となってしまう。1や2で見られた、まだ幼ささえ残しているぜい肉のない、マシーンのようなボーンが消滅したことで、私のなかでは少なく見積もっても2点減点せざるを得なかった。
カメラもよくなかった。「スプレマシー」での手法に味をしめたか、ハンドカメラで狭い範囲を激しい動きのなかで撮る方法がエスカレートしており、もはや迫力と臨場感というより、アクションシーンはわけのわからない画面と化し、私には“やりすぎ”に感じられた。
もう一つ残念だったのは、今回はボーンの内面に「傷」がなかったことである。ボーンシリーズの魅力は、主人公が完璧な能力を持ち合わせていながら、癒しようのない心の「傷」も抱えているというアンバランス性にあった。人間になれない妖怪人間ベム、良心回路が不完全なキカイダーのように、完璧でありながら不完全という宿命的な立ち位置こそ、見る者をボーンに惹きつけてやまないものだったのだ。陳腐な正義感で闘うボーンなんか見たくない。
といったことで、必ずしも納得!とはいかないものの、あるレベルには十分達していると思われ、7点也です。[良:2票]