<ネタバレ>いま日本の社会は、中抜きで格差が拡大しつつある。かつては「一 .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>いま日本の社会は、中抜きで格差が拡大しつつある。かつては「一億総中流」といわれたが、「中流」が急速に減少し、「下層」が増大しつつあるという。そうした状況から、この映画は約30年前のアメリカ社会を描いていながらも、私には近未来の日本を暗示するものとして映った。
正義を求める行動に出ているつもりのトラビスの姿は、第三者的には狂気をはらんだものといわざるを得ない(もしかしたら、オウム真理教の連中の内面も、こうしたものであったのか)。それは、暗殺を企図しながらも、麻薬や売春を憎悪する、一見、矛盾する思考ではあるが、トラビスのなかでは筋が通っている。その歪曲を生み出す都市生活の閉塞と孤独。人ごととは言い切れないものが残って不気味に感じてしまう。
ベツィが属する「階層」とトラビスが属する「階層」の差は、ヒューマンな部分では惹かれ合うものがある二人であっても、両者のあいだに埋めようのない溝を見せ付ける。ラストシーン、ベツィが誘ってもトラビスはもう応じないように描いたところに、救いようのない社会の病巣が浮き彫りにされ、やるせないエンディングだった。
いろいろなテーゼを含んでいて、まるで鉄を飲み込んだような見応えがあった。ずっと記憶に残る映画となる気がする、ということで9点也です。[良:1票]