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<ネタバレ>もう30年も前の、まだ元気な日本に人びとが浮かれて躍らされていたころ、こんな丁寧でゆったりとみられる映画があったんだね。山田洋次監督はじつに人間が分かっている人だ。
三國連太郎と永瀬正敏がじつに平凡な日常を好演していて、いかにも誇張された最近の映画とは違って感情移入できる。まぁ田中邦衛演じる文句タレのダメ人間系もたくさん出てくるのでポジティブな気分にもなれないが、そこがまた違和感がない。
ただし、聾唖である和久井映見演じる女性(こんな可愛い子があんな無邪気な笑顔でいたら悪い男にさらわれかねない)との結婚生活は、思っているほどヤワなことではない。そこを差し引いてハッピーエンドで良かったメデタイ!などと浮かれてはいけない。雪が降る極寒のなか三國連太郎がひとり孤独に耐えなければならないように、現実は晴れの日ばかりではないのだから。