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<ネタバレ>『カラフル』における避けて通ってはいけないものの一つに“背景画”があると思う。手書きとは思えないまるで実写のような絵の上でアニメの人物が動く。『スカイクロウラー』においては背景と人物のコントラストが濃かった。いま思えば押井は背景に対していかにかっこいいかを追及していたようないんしょうだが、『カラフル』の背景はまるで人物のように能弁に語る。
平田オリザ先生はその著書等で「人は環境によって喋らせられている」と主張している。まさにその摂理にこの背景画は従っている。この背景にこのセリフありと言わんばかり。シーンが切り替わり、背景が更新された瞬間にそのシーンの主張がスクリーン全面から高濃度に飛び出てくる。
『カラフル』がアニメという方法を選択したのは、原恵一がアニメしか撮れないのかもしれないけども、この背景の能弁さを活かしたかったからだと受け止めた。それにしてもあんなに精巧な絵、どうやって描くんだろう。
いつまでも心に残るあの鍋のシーンでの父の演技も素晴らしい。兄貴がティッシュを父にだけ渡さないあの間合いと、実はそのあとにちょっとだけ涙がにじんでいた父。『息もできない』においてサンフンが泣いた時よりもぐっときた。たったあれだけの涙なのに。たった。映画って難しいね、沢山泣けばいいってもんじゃない。[良:2票]