<ネタバレ>我々は犯罪や暴力におびえながら生きているが、その一方で他人事 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>我々は犯罪や暴力におびえながら生きているが、その一方で他人事であれば心躍らせたりもする。退屈な日々を受け入れるには、そういう感情も必要だからだろう。ニュース番組で伝えられる、他人の死に本気で悲しんだり、憤る人間などいない。しかし、家族や知り合いが被害者ならどうだろう。被害者が他人でも犯罪を目の当たりにすれば、反応も違ってくるはずだ。これは好奇心で犯罪に近づいた主人公が、現実の犯罪に対し嫌悪する反応と似ている。この映画には、多くの犯罪映画に描かれる、娯楽としての暴力描写がもたらすカタルシスは無い。むしろ観る者の多くに言い知れぬ不気味さと不愉快さを与える。それは、日常と非現実との境界線を取り払う構成の効果だ。ドロシーとジェフリーが夫やガールフレンドがいるにも関わらず、非日常に取り込まれ肉体関係をもつのに対し、フランクがドロシーだけを愛するのは、それが彼にとって日常だからだろうか。奇妙な人物たちや懐古的な音楽などで悲惨で陰湿な題材を重くなりすぎないようにしているのも見事。