2時間という短い時間を楽しませてくれる映画は数あれど、人生に .. >(続きを読む)
2時間という短い時間を楽しませてくれる映画は数あれど、人生に何かしらの影響を与える作品は数少ない。本作はその後者に値する作品の一つだ。
バックパッカーなど長期の旅を好む人はそれほど珍しくはない。それは不遇からの逃避であったり、金銭的な余裕による娯楽であったり形は様々だ。しかしこの主人公の旅はかなり異質である。映画では逃避という言葉が使われていたが、それは通常の逃避とは明らかに異なる。彼は裕福な家庭に生まれ、ハーバード大学を卒業し能力的にも金銭的にも恵まれていた。多くの人が求め、手に入れば満足するものを持っていながらそれを捨てて彼は旅に出た。学資預金を寄付し、身分証明書を切り捨て、持っていたわずかな金を燃やした。ここまでできる人間が世の中にどれほどいるだろうか?社会からの逸脱。保険のない、荒野へ(into the wild)向かう旅だ。人生は、世界はこんなにも素晴らしく、美しい。そう教えてくれる映画だ。
余談だが、ものごとを現実的に考え哲学的なものに意味を感じない人は観るのをやめた方がいいかもしれない。この映画は無数にある人生のあり方の可能性を一つ提示してくれるだけで、哲学同様答えを示してくれるものではないから。