檻から逃げ出した動物、自転車に乗ったサル、着飾った人々。これ .. >(続きを読む)[良:1票]
檻から逃げ出した動物、自転車に乗ったサル、着飾った人々。これらの断片から、街はサーカスを模したものであることがわかります。精神病患者は道化師であり、祝祭への水先案内人と言えましょう。ところで日本大百科全書の「道化」の項目には、祝祭は日常を暗転させた「さかさまの世界」の現出を意図する、という意味のことが書かれています。この言葉が、本作を端的に表現してはいないでしょうか。本作を観賞するとき、我々は擬似的なサーカス、祭典の空間に遊んでいるのです。だからこそ患者たちは、祭典が長く続かないことを自覚しているし、彼らが帰っていくところを見守る我々も、寂しさを禁じ得ないのです。物語のラストにおいて、価値観は再びもとに戻ります。主人公の取った行動はなるほど滑稽でしょう。しかし我々は誰も、腹の底から彼を笑えないに違いない。まぼろしの日々が教えてくれたからです――「戦争をする奴らこそ狂人ではないか」。素晴らしい作品です。ぜひ多くの人に『まぼろしの市街戦』を体験してほしいと思います。 【041209】日本大百科全書からの引用転載を修正しました。[良:1票]