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映画全体がまるで絵画のような作品。アイルランドの美しくも厳しい自然を背景に、そこで暮らす人々の織り成すドラマが丹念に描き込まれた一枚の壮大な絵画。激動する社会情勢に、個人の情念を絡ませていく骨太な展開は、まさにデヴィッド・リーン・スタイル。そんな映画のストーリーとキャラクターを突き動かしていくテーマは、一人の若妻の「性愛」への夢想。もっとベタな言葉で言ってしまえば「欲求不満」。たったそれだけのことが、いや、それだからこそ、時代の大きなうねりと彼女の情念がシンクロして、多くの人を巻き込んだ事件へと発展していき、悲劇と和解を生み出すことになる。このテーマと物語の展開構造は、実は14年後に撮られることになるリーンの遺作「インドへの道」でも繰り返されることになる。現代日本を舞台にすれば、さしずめ「東電OL事件」とか「主婦と男子高校生のメル友」みたいな話になってしまうようなテーマだが、それを芸術的な一幅の絵画にしてしまうところが、デヴィッド・リーンの真骨頂と言えるだろう。[良:1票]