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<ネタバレ>私事で恐縮だが、自費で買った人生初のパソコンがマッキントッシュだった。 実装128Kの片面フロッピー1機のローンチ・モデル、つまりMac128K、またの名を"Thin Mac"である。 時は1984年のクリスマス商戦、サンフランシスコのヴァンネス通り沿いOpera Plaza近くにあったコンピューター屋で「本体+イメージライター+キャリーバッグの3点セット」が本体価格、つまり2,500ドルを切った値段で叩き売りされていた…。 Apple Ⅱcもその年の春には発売済みで、HDDが標準のPC/XTはおろか80286を実装したATも既に世に出ていたのでとても迷った。 が、しかしイメージライター+キャリーバッグの3点セットで値段は本体価格以下という「歪んだ現実」の誘惑に負けてしまった。
この映画は、溢れんばかりの自己愛と人格障害とも言える強烈なエゴを心に抱えた青年が、「時代」とそして「運」という見えざるモノに翻弄されながらひたすら自己実現を試み続けた物語なのだが、映画の切り口がドキュメンタリー調ではない分、知的な喜びは少ない。 ジョブス・ネタ、アップル・ネタ、シリコンバレー・ネタの数々は上品に程良くちりばめられている。 スカリーへの父性観や、実父に会いに行くレストラン・シーンなど、これらは初見・初耳だが、仮にこれがおとぎ話だとしても、それはそれでも良いだろう。 なんと言ってもこれは「映画」なのだから。 実際、この部分だけ素直に物語の世界観に入り込めて、あぁダニーボイルの描きたかったジョブスって、これだったんだろうなぁと思った。
で… 1984年のマッキントッシュだが、鳴り物入りで産み落とされたスティーブ・ジョブス渾身の創造物(あるいは世紀の盗作?)が、何故、発売後1年も経たずに叩き売り状態になったか、その辺りの顛末はこの劇中でも存分に語られているが、私が買った画面が付いたやたら重いプラスチックの箱は「歪んでいない現実」では生産的な役割において殆ど使い物にならず、つまり当時のアップルの経営陣の判断は正しかった...のが真実だろう。
ちなみに以来30年、私はリンゴマークの付いたパーソナル・コンピューティング・デバイスを所有したことが無い。