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<ネタバレ>ジャーナリストの佐野真一氏が今話題の結婚詐欺師K嶋に夢中になっている。その興奮具合から、どうやらとんでもなく魅力的な女性らしいことが伝わってくる。曰く「言葉使いが丁寧で、鈴をころがすような声」「犯罪なしには生きていけない女」「彼女の沸点は異常に低い」「こんなつまらない判決を書く裁判官に、彼女は裁けるわけがない」彼が彼女に惚れ込んでいることは分かるのだが、いったいどのような人物なのかいまいち判然としなかった。佐野氏の表現力をもってしても伝えきれない人物のようだ。ところがこの作品を見てその疑問は氷解した。上記の発言すべてこの作品の主人公ジュエルに当てはまる。なんともその魅力を解説しづらいが、リアリティのある人物造形。もちろんK嶋がまんまジュエルにそっくりなわけはない。しかしかなりの部分で共通のものがあるのではないか。だとすれば佐野氏が彼女に惚れていることを隠そうともしないのも、その判決に憤るのも全て腑に落ちる。それにしてもよくできた作品だ。尋常じゃない色っぽさとシンプルにすぎる価値観を持つ女を3人の男が語る「市民ケーン・羅生門方式」の複雑な構成。張りまくりの伏線を次々に回収する無駄のないシナリオ。製作のマイケル・ダグラスはそのメイキングで「善でも悪でもない人間を描きたかった」と言っている。常識的な価値観では悪としか言いようのない人間も、実際出会ってその行動をみてをみると、いちがいに悪と言って切り捨てるわけにもいかないことがある(無論その逆もある)。一見バカ映画の体をとりながらそのメッセージが心に届くようにできている良作と感じた。