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<ネタバレ>まず、映像がきれいな映画だ。人物設定と、それをもとにした心理描写もなかなか的確。トータルで見るとけっこう無理な設定もあるのだが、それぞれの場面での登場人物の行動や言動には、不自然さを感じさせないように、脚本をそれなりに練っている。伏線の張り方もけっこううまい。大切なときに歌うほど好きだった歌手について、あいつは普段こう言っていた--というのが、後になって効いてくる。さて、このストーリーを作るアイデアの柱の1つに、伊勢正三の「あいつ」という歌があるのではないかと思う。ガラス工房での場面の後、喫茶店での場面があるが、そのバックに伊勢正三の別の歌を流している。ストーリーを作るきっかけとなった歌について、ストレートに言わずにほのめかしているのは、監督自身が思い出の彼に似たシャイな面を持っているからかもしれない。