家族というものは不思議なもので、本来はお互いのためを思って、 .. >(続きを読む)
家族というものは不思議なもので、本来はお互いのためを思って、愛し合って成り立つはずなのに、どこかでちょっとした歯車が狂い始めるとそれが逆に憎しみの悪循環になってしまう。「僕の娘だ」「あなたのものじゃないわ」両親が寝室で交わすこの会話がすべてを物語っていた。愛情はいとも簡単に支配欲とすり替わる。これがやっかいなのは、本人はそれがまっとうな愛情だと思い込んでしまうからだ。妻の提言にもかかわらず、夫は間違い続ける。どうしたらこんな状況から抜け出せるのだろう? それには、シンプルだけど、やっぱりまず相手の話を聞くことだと僕は思う。ララが聾唖学校に行ったとき、実は耳が聴こえなくても音楽を感じることができるのだと気付く。耳で聴くことができなくても、体に響いてくる音。本当はきこえなかったんじゃなくて、きこうとしていなかった。父娘が別の世界にいたように感じていたのも、父が聾だからではなく、娘を理解しようとしてなかったからだ。シャガールも知っていたとおり、「世界は音楽でできている」。父親が娘の音楽を感じようとしたとき、二人は沈黙の世界を出て本来の世界に戻ってきたんだと思う。最後のララの言葉には、思わず泣いてしまった。