<ネタバレ>今も昔も情緒不安定な女が人の気を惹く方法は変わらないのだなあ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>今も昔も情緒不安定な女が人の気を惹く方法は変わらないのだなあ、と変なところで感心。スワンソンの熱演はもちろん(もっとも、人間というよりモンスターにしか見えないきらいはある。悲哀の滲む演技、とは言い難い)、映画全体に漂う妙な生々しさが良い。女優が行動を決めるのにやたらと占いを重視する辺り、瑣末なネタではあるがとてももっともらしい。
実は狂った女優と同じくらい、寡黙な執事が怖い。元夫でありながら執事として仕え、現在の恋路まで援助する、その奇妙な愛情のあり方が薄気味悪かった。偽のファンレターをせっせと書き続けてもいずれ破綻の日が訪れるのはわかり切っていたはずで、ほんとうに女優を守ろうという使命感があるのであれば、鳥を駕籠に入れて飼うような支配的なやり方はありえない。この映画がこんなにもリアルなのは、単に一人の女が狂うのではなく、異常なほど依存し合う関係が狂気を培養する背景として描かれているからこそだろう。
死者を語り手に置くなど、失敗としか思えない試みもあるが、いくつかの欠点を差し引いてもやはり優れた脚本だと思う。そして特筆すべきは結末のおぞましさだ。グロリア・スワンソンの怪演も、映像が滲んでいく演出も強烈。おそらくラストシーンの衝撃度だけをとってみれば、映画史上でも屈指じゃないだろうか。