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<ネタバレ>高評価ばかりのなか恐縮なんですが、あんまり楽しめませんでした。いちばんの原因は、ディートリッヒがゲイリー・クーパーにあそこまで惚れこむ理由がわからなかったという点。
ショウの場面を観ればゲイリー・クーパーのほうが惚れるのはわかるんですよ(というか惚れなきゃおかしい、あんな女)。でもそのあとの二人きりの夜を過ごす場面は、別にロマンティックでもなければ、心が通じ合ったようでもなく……あの程度で男性不信だった女が砂漠まで追いかけていくかなあ? マンジューだって相当立派な男だし。二人が熱烈に愛し合う理由がどうしてもわからず、終始冷静な目で観てしまった。
ディートリッヒの心が揺れ動いたり、ここぞというときに糸が切れたように平静を失ってしまう描写に関しては、とても秀逸だったと思う。この女優さんにしかない美しさを映像に閉じ込めたという点でも、間違いなく大きな価値のある作品だろう。この映画のストーリーを忘れることはあっても、あの男装のディートリッヒはけっして忘れることができないと思う。
それだけに、乗り切れなかったことがとても残念だった。
【余談】テレビで観た美輪明宏の歌い方が、微妙にディートリッヒっぽかった。けれん味の強さは十倍増しでしたが…。