<ネタバレ>政治を題材にしつつ、同時にコメディタッチの温かい家族ドラマで .. >(続きを読む)
<ネタバレ>政治を題材にしつつ、同時にコメディタッチの温かい家族ドラマでもあるという稀有な作品。社会主義というと怖いイメージしかなかったけれども、思想の根底には平和と幸福を追求する純粋さがあるのかなあと思わされた(だからこそ恐ろしくもあるんだろうけれども)。
息子のお手製の偽ニュース映像を観て母親が泣くクライマックスはほんとうに素晴らしい。政治的きな臭さや現実の過酷さを、息子の強引極まりない嘘が振り切ってしまう。当然のごとく嘘は破綻するのだけれども、嘘というフィルターを透してかえってその愛情の真っ当さが顕わになるという脚本の上手さには、唸った。母親の「素晴らしいわ」という言葉は息子の嘘に調子を合わせてはいるんだけど、嘘じゃないんだよね。あの瞬間、突き通した嘘が真実になった。
「グッバイ、レーニン」というタイトルも秀逸。母親の純粋さは裏を返せば致命的なもろさでもあったはずで、本来ならかつての心の支柱であった社会主義に訣別するのは不可能だったろう。しかし映画を最後まで観ると、彼女は確かにこう言えたはずだと思えるのだ。