<ネタバレ>「ウォーターゲート事件」の詳細や、ニクソン大統領政権下の情勢 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>「ウォーターゲート事件」の詳細や、ニクソン大統領政権下の情勢等に疎いので、はっきりいって“何がなんだか分からない”“誰が誰だかよく分からない”という状態だったが、何らかのパワーのある作品ということはよく分かった。
それを支えているものは、“ジャーナリスト魂”と“報道の自由の精神”だろうか。
面白みには欠けるが、“電話取材”“インタビュー取材”“メモの重要性”“ネタに対する裏付けの根拠”等の取材の基本を忠実に描いているために、こういった精神がきちんと伝わってくるのではないか。
また、基本的にはもちろんジャーナリスト寄りだが、一方に片寄るわけではなくて、なるべく中立に描こうとしている点も好印象。
実際の映像を用いて、相手方の言い分や反論もきちんと描きこまれている。
さらに、映画らしい余計な展開もない点もなかなかの思い切った演出となっている。
サスペンスタッチで描くこともできただろうし、国家の陰謀を大げさに描くこともできたはずだ。
そういった手法を取らないことによって、“面白み”や“派手さ”はなくなってしまったかもしれないが、“真相を追い求めたいという姿”や“圧力等に負けない精神”を虚構ではなくてリアルに感じられる作品に仕上がっている。
単純な面白みには欠けるものの、“目に見えない圧力”は過剰には描けないもののきっちりと描かれているので、そういった面白みは感じられるものとなっている。
地下駐車場でのなんでもない物音、夜道を歩いている際のプレッシャー、情報提供者と話している際の周囲からの視線などの演出が上手い。
圧力に屈するのは簡単なことだが、圧力に対して抗うことの厳しさや、単純で地味な作業が報道を支え、その報道が世界を動かしているということの重みを感じさせる作品だ。
本作を見れば、“報道”に対する見方が少々変わるかもしれない。