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<ネタバレ>「ロビン・フッド」映画は多数製作されているが、有名なケヴィン・コスナー版も含めて鑑賞した記憶が残っていない。他の作品と比較することはできない点は良かったのか悪かったのかは分からないが、本作は素晴らしい作品と感じられた。
ストーリーに関していえば、サプライズ的な面白みはそれほどないといっていいだろう。浅はかなイギリス王を利用するフランス寄りの悪者を倒すだけというシンプルなものとなっている。
本作は、ストーリーで観客を魅了するというよりも、“完成度の高さ”で観客を魅了している。細かい部分まで驚くほどしっかりと作り込まれている。ここまで高い仕上りは、リドリー・スコット監督の“匠の業”といえようか。奇をてらうことはなく、シンプルでありながら、妥協を許さない姿勢が現れており、無理なく流れていく展開に安心して身を委ねることができる作品だ。
ストーリーに関して、面白みはないといったが、根幹部分についてはもちろんしっかりとしている。ロビン・フッドと呼ばれた男の“成長”“自己発見”のようなものが感じられる。自分が何者であるか分からなかった男が、ある貴族の偽の息子となり、貴族の息子として振舞いながら、自分のルーツを探っていき、自己のアイデンティティを確立していく。自分が何者であり、何をなすべきかを明白にした後に、“伝説”へと昇華していっている。“伝説”といっても、神話的なものや英雄的なものではなくて、何かに縛られるのではなくて森の中で“自由”に生きる一人の男、家族をもつ平凡な男のような形で締めくくっている点が素晴らしい。本作のテーマである「羊が獅子になる」という過程をリドリー・スコットならではの視点で見事に描き切っている。我々は決して英雄にはなれないが、誰しもが獅子にはなれるということを伝えているような気がした。
“弓の名手”という設定ながら、あえてそれを封印しているところにもリドリー・スコットのこだわりが感じられる。驚異的な能力を持つ英雄が活躍する映画ならば、資金さえあれば誰でも撮れるかもしれないが、英雄が英雄らしく活躍しない映画はこのコンビにしか撮れないかもしれない。
また、短い出番ながらも、ほぼ全てのキャラクターの個性や心情が感じられる仕上りとなっている。喜怒哀楽やユニークさを用いることにより、それぞれのキャラクターが生きており、これもリドリー・スコットの上手さといえるだろう。