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<ネタバレ>撮影方法に関しては凝っているようであり、それを注視していれば楽しめるかもしれない。
高架線を走る鉄道を映しながら、徐々に視点が下へと下がっていくシーンを観るだけでも面白い。
長回しや鏡といったアイテムを利用したり、静から動への移行など、緊張感・緊迫感が高まるようになっている。
アントワン・フークアらしい本格志向のリアルな作品には仕上がっていると思われる。
主演の3人の演技も素晴らしく、フークアのイメージ通りのリアルな演技を繰り広げている。
イーサン・ホークのかなり切羽詰った演技、リチャード・ギアのかなり情けない演技、ドン・チードルのかなり苛立っている演技、それぞれの演技は観客に対して訴えてくるものがあるだろう。
しかし、本作が言わんとしていることに関しては、自分には難しすぎたのかもしれない。
ストーリー自体には難解さは存在しないが、結局のところ何を言いたいのかがよく分からなかった。
家族を守るため、人生を取り返すために必死になった男たちは悲惨な末路を辿り、人生に絶望し諦めた男は何も望みどおりにならないというような“人生の無常”を説いたようなものかもしれないが、初見ではピンとは来ない流れ。
人生が思い通りにならない男たちがもがいて、あがいて、苦しんでも、人生は変わらないということだろうか。
「チャイナタウン」のような仕上りをアントワン・フークアは求めたのだろうか。
「犯人は誰か」「事件の顛末は何か」「出会うはずのない3人が出会うときに何かが起きる」といったような単純なハリウッド映画とは異なる仕上りとはいえ、もう少しだけ心に訴えてくる分かりやすいものが欲しかったところ。
冒頭の会話に「より善か、より悪か」「間違えた方法で正しいことをする」といったヒントが隠されていたが、これらのキーワード通りに進んだようにも思えない。
「トレーニングデイ」や「ティアーズ・オブ・ザ・サン」を見る限りでは、アントワン・フークアらしい結末ともいえるが、上手く“オチ”ていない気がした。
リチャード・ギアが呆然としながら歩んでいくラストは悪くはないが、あのシーンの意味を深く噛み締められる者は少ないのではないか。
“傑作”になり得る素材ではあるが、微妙に何かが噛み合わなかったか。
ただ、高い仕上がりになっているので、再見すれば評価は変わるかもしれない。