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冒頭、アイザックが語るニューヨークについての想いが興味深い。
アレンはニューヨークを偶像化もしているし、ロマンティックで白と黒の世界としても描いているし、雑踏やせわしなさ、そして現代文化の腐敗の象徴等々としても描いていると感じる。
ニューヨーク、マンハッタンは見ようによっては確かにどのようにも見れると思う。
ニューヨークをどのように見るかは、映画の中で触れられていた主観の問題かもしれないが、アレンはこの映画を通して「永遠の都」に対する深い愛情を込めて送り出したと感じる。
これほど美しく描かれたニューヨークの映画はないだろう。
特に夜明け前、犬の散歩の際にアイザックとメリーが公園のベンチで語るシーンや、アイザックとトレイシーが馬車のようなもので回るシーンには目が眩む。
ニューヨークの美しさを強調しながらも、アレンが伝えたかったことは人間の不条理や矛盾じみた行為、感情と建前に揺れる人間模様を描いていると思う。
ニューヨークに住むインテリたちの不必要な問題を抱え込むような「頭」を使った愛し方に対して、揶揄を込めているのではないかと思う。
人間は「頭」で愛するのではない、「感情」で愛するのではないかということを感じた。
結婚をしているからとか、年齢が離れすぎているからとかを言い訳にごちゃごちゃと頭で考えすぎている。
もっとトレイシーのように本当の感情を放出すべきではないか。
登場人物の中で一番トレイシーが己の感情に忠実であり、また「人を信じなきゃ」という一言に誰よりも大人を感じさせた。
人間にとって、確かに「知」は必要なのかもしれないが、それ以上に必要なものを感じ取れる映画だ。
また、アレン流の笑いも随所に込められていて、元妻が書いた告白書の中身には笑えたなあ。