職人ソダーバーグの腕前が中途半端にしか発揮されなかった作品。 .. >(続きを読む)
職人ソダーバーグの腕前が中途半端にしか発揮されなかった作品。「トラフィック」と比べてもキャラの書き分けはお粗末そのものです。だいたい、ドキュメンタリー色の濃いソダーバーグにハリウッド娯楽映画を撮らせるのは辛かったのではないでしょうか。たしかに豪華スターのいかにも楽しそうに演技している様子は「パルプ・フィクション」や「スナッチ」のそれを見ているようで心地いいですし、演出もいかにも芸術作家ソダーバーグ、といった感じで小粋なつくりには感心させますが、11人の個性をきちんと描けていないためキャラの半数が存在感もないまま終わってしまいます。さらにオーシャンもベネディクトもとても大物には見えないのは脚本の問題ではないでしょうか。ミスしたときもカジノを相手取っているとは思えないほどマイペースなテンポでこれはどうも題材を間違えたな、と何度も思いました。これなら人数もスケールもずっと小さい「ジャッキー・ブラウン」の横領シーンの方が緊張感があります。カジノではなく銀行ならこの雰囲気にもある程度は納得いったのかもしれません。チームの描写にいたっても半数のメンバーは完全な裏方扱いだったのも痛かったです。豪華キャストを安いギャラでそろえたのはジョージ・クルーニーだそうですが(ジュリア・ロバーツとの駆け引きは有名)、「パルプ・フィクション」が監督の信頼から豪華キャストを集め、見事に個性の活きた作品になったのとは対照的でした。「オーシャンズ12」はもっとひどかったですが、ソダーバーグはこのままハリウッドでやっていけるのでしょうか・・・