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<ネタバレ>鑑賞前は、ダメ男が子供たちと野球を通じて自分を見つめ直す、よくあるドラマだろうと高を括っていました。
しかし実際はお涙頂戴でも無く、子供をダシに感動を仕立てた安っぽいドラマでもなく、治安の腐敗、殺伐とした街、エゴに塗れた大人たちなど、荒廃した世界を映し出したリアルなドラマだった。
主人公は堕落したダメ人間の典型だが、そんな自分を嫌悪しつつ、そのぬるま湯から簡単には抜け出せない様子も窺える。
これはつまり、人間の根本的な弱さと、大人に成れば成るほど堕ちた時の絶望感が大きいのだ、ということを意味しているように思う。
しかし、どんな人でも変わることが出来るはずだ。
その代名詞として、愛や子供という純粋で無垢な存在があるのだろう。
綺麗事と言われるかもしれない。
だが、こんな時代や環境を恨む事無く、真っ直ぐ懸命に生きようとする子供たちの姿を前にして、自らの荒んだ生き方をどうして恥じずにいられる?
愚かな自分でも受け入れようとしてくれている人を前にして、どうして変わる事を恐れる必要がある?
どんなに小さくても、自分が変わる為のキッカを何か一つでも掴めたか否かで、その後の人生がいくらでも変えられる事を、この映画は教えてくれる。
しかし、理不尽なこの世界。
生と死の前では、人はあまりにも無力なのだという事を感じざるを得ない出来事に、言い知れぬ悲しみを感じる。
目を背けたい現実を受け止めながら進むのは辛く苦しいが、人間として大きく前進する為の大切な課程であるのだろう。