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<ネタバレ>ピクサー作品だというのに、予備知識もほとんどないし、世間の評判もあまり聞かないまま鑑賞。音楽を映像でみせるのは難しいけど、音楽だけでなく表情や視覚効果も融合した演奏シーンにまず引き込まれる。ところが、人生最大のチャンスと思われた演奏機会の直前に「あっちの世界」に行ってしまった後悔から、なんとか現世に戻ろうと奮闘するあたりは、『インサイド・アウト』のおっさん版の趣きだが、抽象的な映像表現と結構複雑なルールに少し疲れる。物語が一気に動いたのは、主人公ジョーが、問題児22番のメンターになったあたりから。並み居る著名人を蹴散らしてきて22番と、何が何でも現世に戻りたいジョーのやりとりが微笑ましいが、2人を通して描かれるのが「生きる意味」であったことに驚く。個人的には、自分の夢が叶った夜に突然訪れるむなしさ、今度はこれが「日常」になることをうまく受け入れられない感じは、似たような経験があったので、とくにぐっと来た。夢はかなっても日常は続く、という当たり前のことに気づき、「生きる意味」をより深く考え始める主人公。そこからの展開は、予想の範囲を超えるものではないですが、無機質で抽象的な死後・生前の世界との対比で、日々の日常の美しさがとにかくこれまでになく説得的に描かれたアニメーションであり、その描写は涙なしには見られませんでした。物語の設定やバランスに難点がないわけではないのですが、「生きる意味」という難題に果敢に挑み、映像でその答えを示してみせたことで、私にとっては特別な一本になりました。