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<ネタバレ>いつもは自身の作品をまるで評価しないウディ・アレンが珍しく『カイロの紫のバラ』とともに「最高傑作」と豪語したのが、この『マッチ・ポイント』。アメリカの批評家の間でもいわゆる全盛期の作品をおさえてこの作品を最高傑作と呼ぶ人も多いようですし、カンヌではコンペティション部門(作品を賞の審査対象として出品する部門)に出品されていないにもかかわらず、下馬評ではパルムドールの有力候補でした(アレンは映画祭と名のつくもので映画を正当に評価するのは無理だと考えていて、上映はしても出品はしない)この作品がアレンのベストかどうかは別にしても近年でもっとも気合の入った作品であることは間違いありません。僕は彼が運とモラルに対して、非常に強い確信を持っていることを知っていたのでとても面白く見れました。アレンは確か『映画と人生(ウディ・アレン自作を語る)』の中でこのような主旨の発言をしています。「神は存在しない。もし存在したとしても、突然目の前に現れて我々を裁かない。であるならば、モラルは個人個人の趣向の問題で殺人を犯しても良心がとがめない人はいる」そして、最後に人生を決めるのは運。「現在の精神分析全盛の時代では、人々は自分の力で人生を切り開いていけると考えている。しかし、我々は自分の能力を過信しすぎている。私が成功したもっとも大きな要因は何でしょうか。才能でしょうか、努力でしょうか。違います…映画文化を持つアメリカという国に偶然運良く生まれたことなのです」以前から僕はウディ・アレンは精神分析のほうでもてはやされるけど、過去の作品のセリフが示すように、人生観においては無神論的実存主義の影響が濃厚だと思っていたのですが、この作品を見て再確認しました。ただ、アレンは理詰めで物語を作っていくのでコメディのときのような意外性、情緒性がない分、心に響くかはわからない。そういえば、ノラの妊娠について警察が追求していないのはおかしいという意見もありました。確かに。忘れちゃったのか、カットしたのか…それとも妊娠はうそだったという暗示か。ただ、どっちにしろ妊娠は動機の裏づけにはなっても、犯行の証拠にはなりませんので結末は変わらない(警察はクリスに動機があることを把握してたし、物的証拠が別から出た)はずだからか、見てるときは気にならなかった。アレンさん詰めが甘かったりするからね。まぁそれを引いても面白かった。