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<ネタバレ>演技は良い、撮影も良い、テーマも良い、映画全体も上品にまとまっていて、いかにも賞レースで評価されそうな要素を多く持っているのですが、惜しいところで良作になり損ねたという印象です。スッキリしなかったのはマイケルの心理描写が雑だったことで、彼の葛藤は何となく推測できるものの、それをエモーショナルなドラマに昇華しきれていませんでした。レイフ・ファインズという瞳だけで演技のできる俳優に終始頼りっぱなしで、作り手の側がマイケルの心情を整理しきれていなかったことがその原因。冒頭、恋人から「あなたの気持ちがわからない」と言われたところからマイケルの回想が始まりますが、映画を観終わってところでハンナとの関係がマイケルの人格形成にどう影響したのかがまるで見えてきません。ひと夏の経験が少年の人生をどう変えたのかを表現できていないのでは、この題材の映画化作品としては失敗でしょう。オスカーも納得のケイト・ウィンスレットの熱演や、一風変わったホロコーストネタの料理(ホロコーストに関わった者を単純に断罪するのではなく、無知ゆえに殺戮に加担した者を罪に問うべきかという珍しい問いかけがなされます)など良い点は多くあるのですが、主人公マイケルの人物像がブレブレでは話になりません。