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<ネタバレ>本作以前に映画への出演記録はまったくなく、舞台やテレビの経験もない。端役やエキストラとして見切れていたという目撃情報すら一切なく、エンタメ業界とは何の縁もなかった男が(武術指導として撮影現場に出入りはしていたようなのですが)いきなり一枚看板でデビュー。デビュー間もなくから大役を任されるということは、マーロン・ブランドやトム・クルーズらごく限られた実力者のみに与えられる栄誉なのですが、セガールに対する扱いはそのレベルに留まっていませんでした。メジャースタジオが直接製作する企画のコントロールまでを許されており、さらには、彼自身による原案の脚色には『エイリアン』『トータル・リコール』で知られるロナルド・シャゼットが、監督にはチャック・ノリスの最高傑作とも言われる『野獣捜査線』を撮ったアンドリュー・デイビスが雇われるという鉄壁のサポート体制が敷かれており、ハリウッド史上、後にも先にも例のない特別待遇で迎えられていたのです。。。
そんな本作ですが、良くも悪くもセガールの大物ぶりが発揮された内容となっています。映画への出演経験のない人間とは思えない程の落ち着きや存在感はさすがのものだし、圧倒的に強くて負ける気がしないという抜群の安定感もこの頃からです。以後四半世紀以上に渡る俳優としてのパブリックイメージを本作1本で作り上げてみせたという実績は驚異的としか言いようがなく、セガールのセルフプロデュース能力の高さは評価せざるを得ないのですが、同時に、ファン以外には受け入れ難い、個性的すぎる作品となっていることもまた事実。デビュー作なのだから、もっと王道に寄せてもよかったのではないかと思います。。。
本作の脚本はなかなかの出来です。シカゴの下町でCIAの陰謀を暴くという荒唐無稽な内容ながら、謎の振り方やネタ明かしがうまいので、思わず引き込まれてしまう面白さがあるのです。特に、主人公が追われる身となり、孤立無援の中で真相に辿り着こうとする後半の展開には適度なスリルが宿っており、一流脚本家を雇ってきたことの成果は確実に現れています。セガール自身も本作の出来に満足したのか、この脚本は以降のセガール作品のテンプレートとなり、特に『沈黙の戦艦』以前の初期セガール作品は、どれがどれだか区別が付かない程にこの内容を流用したものとなっています(本作以降の3作品をすべて全米1位にした実績はさすがですが)。