前半部分は「スパイダーマン」をなぞり、「現実はマンガほど簡単 .. >(続きを読む)
前半部分は「スパイダーマン」をなぞり、「現実はマンガほど簡単じゃないよ」とヒーローものの解体作業を行うのですが、クライマックスでは見事なまでのカタルシスを炸裂させてニューヒーロー誕生を高らかに宣言するというニクイ構成となっています。「ギャラクシー・クエスト」とまったく同じ構成ではありますが、ボンクラ男子の妄想を肯定するこの手の映画は、やはり嫌いになれません。マシュー・ヴォーンの演出は冴えまくっていて、キックアス処刑ライブにおけるヒットガール登場のタイミングや、「マトリックス」と「ウォンテッド」を合わせて「リベリオン」風味にしたようなラストの討ち入りなどは、アクション映画として完璧だったと思います。また、残酷描写から逃げていない点でも本作は評価できます。描写が極めて残酷であること、特に小学生が銃を握って大人と戦うという点において本作は厳しい批判を受けましたが、アメコミを解体する作業において、これらの点は決して外してはいけない部分でした。スパイダーマンが悪との戦いをはじめたのは高校生の頃だったし、ザ・フラッシュの相棒であるキッド・フラッシュは小学生、日本にも10代のヒーローは大勢います。そんなヒーローものの設定を煮詰めていくと、武装した子供が犯罪者を殺して回っているという異常な図式が自ずと浮かんできます。アメコミの解体作業をやるのであればその異常性を観客に認識させるという描写は絶対に必要だったわけですが、マシュー・ヴォーンは批判を覚悟でその描写をきっちりとやりきったのです。。。さらに、この手のオタク映画では音楽のセンスも重要となってきますが(オタク臭さ全開の「パルプ・フィクション」がカッコイイ映画となりえたのは、タランティーノの選曲センスによるところが大きい)、その点でも本作は効果的な選曲をしてきます。前述の「ギャラクシー・クエスト」がオタク系の人を喜ばせるだけの映画に留まったのに対して、本作はカッコイイ選曲を披露したことで、オタク以外の人をも取り込むセンスの良い映画になりました。知的でありながら優れたエンターテイメントであり、オタク臭いのにセンスが良い本作は、非常に完成度の高い作品であると言えます。文句の付けどころがないほど良く出来ています。