映画館ではじめて観た時は「よく出来た佳作アクション」という印 .. >(続きを読む)[良:1票]
映画館ではじめて観た時は「よく出来た佳作アクション」という印象でした。ダイ・アナザー・デイ、トリプルX、トータル・フィアーズ、そして本作を断ってブラッド・ピットが主演したスパイゲームとエージェントものが多く作られた時期でしたが、ド派手な見せ場を売りにした作品ばかりの中、見せ場を切り詰めて地味ながらも穴のない仕上がりとした本作は異色な存在だったと同時に、派手なだけのアクション映画に観客が飽きはじめている空気をうまく感じ取って作ったもんだと感心した記憶があります。とはいえ飛び抜けて面白いわけでもないので「佳作」。現在見返しても単品ではその印象は変わらないのですが、アクションの金字塔となったシリーズの第一作として振り返ると、本作の重要性、非凡さがうかがえます。ジェイソン・ボーンは基本的に知性を武器とし、衝突を避けながら行動していることは論理的に筋が通っているし、いざという時に飛び出す殺人技はこの上なくプロっぽいし、また彼を仕留めるべく放たれた刺客達はストイックなかっこよさに溢れてるし、CIAは役人の勤める官僚組織としてきちんと描写され、お役所ならではの強力なネットワーク、権限の脅威が物語で効果的に使われているしと、このシリーズの持つ優れた点は、すべて第一作の時点で完成されているのです。第二作以降の慌ただしい編集、カメラワークがないので全体的に落ち着いた雰囲気なのですが、影になって役者の顔が映っていないカットがあったり、役者がアクションを起こした後にカメラがその後を追っていたりと(アクション映画にありがちな、見せ場にカメラが先回りしているというショットが一切ありません)、視覚にリアリティを重視しているのも第一作からのようです。「派手な見せ場を入れろ」という映画会社とケンカしてでも作品を守り、結果的にそれが3部作を支える柱となったわけですからダグ・リーマンのビジョンは的確なものであったと言えるし、余計なものは加えず第一作の継承・発展に集中したポール・グリーングラスの手腕も抜群であったと言えます。そんな中、唯一残念なのがマリーの存在で、「どうしたの?」「何があったの?」といちいち聞き返してくる彼女がアクションのテンションを相当下げています。マリーと別れて挑んだ「教授」と呼ばれる刺客との戦いの異様な盛り上がりを見るにつけても、彼女はもっと早く退場させるべきだったと思います。[良:1票]