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<ネタバレ>Windows95が発売されてようやく一般にもインターネット普及の土壌ができたばかりだった1995年の段階で、すでに電脳や情報の海をテーマにしたという先見性。また、舞台となる未来都市の作り込みの凄さや、リアリティと荒唐無稽の間で絶妙なバランスを維持するアクションなど、すべてがハイレベルで時代に囚われない普遍性を持つ作品だと言えます。スカヨハ版の鑑賞にあたって十数年ぶりに鑑賞したのですが、インターネットが当然のインフラとして定着した現在の目で見る方がよりしっくりと来て、以前に見た時よりも印象はさらに良くなっていました。とにかく凄い映画だと思います。
本作のタイトルには「抜け殻(シェル)に魂(ゴースト)は宿るのか」というテーマが集約されています。脳や脊髄を除く全身が義体化された主人公・素子は、「自分は作られた記憶を信じ込まされているニセモノではないのか」「ほぼ全身が義体である自分を人間と言えるのか」との不安を抱き続けています。しかしクライマックスで100%電脳である人形使いと接触し、その魂が生身の人間のそれと何ら変わらないものであると知ることで有機か無機かという器へのこだわりが無意味だったことを悟り、新たな電脳生命体へ進化する道を選択します。これぞサイバーパンクです。
他方で、テーマがよりはっきりと見えるようになった分、構成のまずさも見えるようになりました。実存主義を説く素子の物語が横軸だとすれば、人形使いを追う中で巨大な陰謀に巻き込まれていく9課の物語は縦軸だと言えますが、9課の物語が無駄にややこしくて観客に要らん脳を使わせているし、本来は盛り上がるべき部分に勢いがなかったりと、娯楽作としてはやや失敗しているのです。ひたすらしかめっ面をするのではなく、バカバカしくも面白い部分があれば、より素晴らしくなったと思うのですが。
この点、評判の良くないスカヨハ版は娯楽部分のまとまりが良く、本作の欠点がうまく補完された作品だと評価できます。本作を見ればスカヨハ版の良さが分かるし、スカヨハ版を見れば本作がいかに深いことを語っていたかが分かる。ニコイチで見ることで双方の味わいがより深くなるという、なかなか面白いコンビだと思います。[良:1票]