<ネタバレ>極めて特殊な設定ですが、その中身は非常に単純。①感情は記憶を .. >(続きを読む)[良:2票]
<ネタバレ>極めて特殊な設定ですが、その中身は非常に単純。①感情は記憶を超えうるのか?、②ラブラブだったふたりが別れに至るまで。この映画がテーマにしているのはこの2点だけです。①については、恋愛感情とは巡り合わせで起こるものなのか(=偶然)、それともまったく違うシチュエーションで出会っても恋愛感情は起こるものなのか(=運命)という問いかけですが、本作の出した答えはYes。ジョエルとクレメンタイン、メアリーとミュージワック博士の2組のカップルが記憶消去を体験しますが、どちらも記憶消去の後にもう一度恋愛感情を抱きます。ですが恋愛が一度失敗に終わっていることを知ると、メアリーは博士との報われない恋愛を終わらせることを決め、一方ジョエルとクレメンタインはお互いの欠点を認識し、自分がそれを許容できなかった事実を受け止めつつも、また恋愛しようと決めるのです。ジョエルとクレメンタインの決断はいかにも映画的なきれいごとのような気もしますが(あんな告白テープを聞かされて付き合う気になりますか、普通)、その根拠となる②が非常に秀逸なのです。ジョエルとクレメンタインの恋愛は私たちの身の回りにも転がってるような本当に普通のもので、だからこそふたりの葛藤には誰もが身につまされる思いをさせられます。私は彼女と鑑賞したのですが、ふたりがケンカする場面になると自分まで気まずい思いがしたし、一方ラブラブの場面では妙に照れくさかった。それほど恋愛というものがよく描けているんだと思います。感情が記号のように並んでるだけの映画や、ありえない主人公の泣けるラブストーリーなんかではこんな気持ち味わえません。その描写において、時間を逆行させるという掟破りが尋常ではない効果を発揮しています。お互いの欠点がどうしてもガマンできなくてケンカを繰り返しているところからはじまり、ラブラブだった頃へと戻っていくという驚天動地の脚本。あれだけ罵ってた相手が自分にとってかけがえのない存在だったのだと再認識する過程が押し付けがましくなく本当に自然でした。さらにこの映画、幼少時代へのノスタルジーまで盛り込んでみせます。どこまで凄いんだと感心しっぱなしでした。ともすれば難解となる脚本をわかりやすく、かつ刺激的なビジュアルでまとめてみせた演出もさすがで、芸術的にも感情的にも得るものの非常に大きい作品だと思います。[良:2票]