<ネタバレ> タランティーノ氏絶賛というマスコミのお触れによって、遅れば .. >(続きを読む)
<ネタバレ> タランティーノ氏絶賛というマスコミのお触れによって、遅ればせながらDVDビデオで本作を鑑賞させてもらったが、原作よりは遥かに面白いものの、ミステリーや暴力映画として観ると評価を低くせざるを得ない映画だ。
原作の設定である、10数年に及ぶ監禁生活から解き放たれた中年男が、なぜ自分を監禁したのかと問う。多くのミステリのように、犯人探しに燃える男がいるのではなく、犯人が明らかになっている上で、その理由を探すという設定はなかなかに刺激的で独創的だ。ここまでは原作通りだが、原作はそこから徐々に規模が小さくなっていき、最後は小学校時代の「羞恥心」が原因という、全く意味の分からない展開へと進んでいく。
そこは、翻案というものの良い点で、映画は、原作の余りに退屈な謎解きを排除している。原作を既に知っている身からすれば、原作がひどい謎解きを提示している段階で、それを超えるのは当然と思うが、しかしここまで刺激的な謎解きを証しするか、と思うと、うれしくなった(抽象的な言い回しで申し訳ないが、さすがにこの謎をバラすと本作の魅力は落ちるので許して欲しい)。原作つきの映画をどう料理するかが映画監督の手腕だが、うまくいっている。
だが、やはり原作と同様、疑問に思わざるを得ないのは、監禁をした理由が家庭内の問題に端を発した殺人という点である。説得力に欠けると思う。
「10数年に及ぶ監禁生活」という凄みのある事件が、序盤に起こっているのに、そこから謎が急速にしぼんでいくようでは、ミステリとしての評価は高くできない。それを超えるショックがなければいけない。私的でもいいが、もっと極めて陰惨でどうしようもなく静視できないような内容でなければ、あつくなれない。ワイドショーの一場面的な理由で監禁するというのでは、単なる社会学的な考察の域を出ていない。
暴力シーンはワイヤーがないだけいいが、へたくそなカンフーアクションでつまらない。オ・デスがわめくシーンは良い。舌を切るのもいいが、切るシーンを露骨に見せないのは駄目。観客は暴力を観に来る時、汚くてひわいな人間の姿が観たいのだから、惜しみなく見せるべきである。
主人公オ・デスを演じたチェ・ミンシュクの演技はなかなかのもの。タランティーノが本作のどこを観て審査員大賞をやろうと思ったのか不明だが、やるなら男優賞にして欲しかった。